既存にある型を作り直す・再構築する表現方法はデザイナーを筆頭に時代を遡っても行われ続けている一つの手法。リファレンスから生まれる素材の変更や既存のものを軸に装飾を加える技法は目新しく、斬新なデザインを生み出します。

1970 年代にフランスの詳細不明のメーカーにより米国のフライトジャケットを参考材料に製作された本品は軽快なマテリアルを用いることで本来のパイロットに向けたミリタリーウエアの方向性とは全く異なる、気品のある匿名性の高い一着へ変貌を遂げました。

米国の「 A-1 」フライトジャケットのリブを使用した立ち襟にループの付くフロントのディテールやシルエットの構築ははそのままに、本来は革を用いた強靭な素材感によるイメージを逆手に取るかのように軽量な 麻 素材へ変更。透ける薄手の表地に意図的に ？ 裏地へ用いられた格子柄により光の加減で表地に浮き出るウインドウペンは気の利いた洒脱な印象。本来は装飾されていない腰元に左右付くサイドアジャスターも本品ならでは、存在感のあるゴールドの金具によりデザイン性の高さと製作者の趣味の良さを感じる逸品です。

タグに描かれた魚や鹿、「 le veiement sport de qualite ( 身体を動かす為の衣類 ) 」 と記載されている事柄から釣りや狩りを連想させるアクティビティに富んだアウトドア、スポーティな背景を持つメーカーだと想われます。お国柄を感じられるモダンな色彩感覚やシルエットの構築は上品さと不変性に加え、他に無い強烈な個性を兼ね備えています。