ヨーロピアンカルチャーを象徴する存在ではありますものの、決して簡単に容易に御提案叶わないのがハンティング・カルチャーのヴィンテージやアンティーク。実用性良し・機能デザイン良し・有用性高しのそれらにおいて、御提案をはばむきっかけ、泣く泣く諦めざるを得ない要素はシルエットバランスでして、とはいえその点もハンティング・カルチャーの根本に関わりますので致し方なしではあります。

森や山や平原などのフィールドで活動することを目的としており、その純度は特に高いものですから、活動しやすさ＝動きやすさ＝可動領域は特に豊富に用意されていて然るべきがこれらのハンティング・ピース。ゆえに身幅と着丈のバランスが独特でして概ね正方形に近しい設計に着地すること多く、もちろんそれでも美意識はありますものの身幅が多く余る装いのバランスは過度な男性性に映ってしまうこともあって ( やはりタフなハンティングですので ) 、現代的な着こなしと遠く、かつ難しさが際立つように感じられる機会が多くありまして、惹かれるのですが御提案が叶わないことがあります。もちろん、コンディション面での断念の多々です。

よって本品との出逢いは嬉しい限りでした。ハンティング・カルチャーとしての要素をしっかりと備えて当然ながら豊かな可動域なのですが、絶妙にシャープで洗練されたパターンメイク。元々の設計者がモダンな感性を有していて、かつ初代着用者のボディバランスが美しかったのでしょう。純粋なヴィンテージ・ハンティングジャケットでこのようなモダニズムを感じられる機会は少ないですから、となると実用性スタイル性有用性において現代の衣類として途方もないポテンシャルを秘めた一着ということになります。

なんと言っても色調が極めて珍しい。考えてみたら森の中に居る機会も多いはずなのですがこのように美しいグリーンカラーに出逢う機会は少ないです。なおこちらはオリジナルの染色から時間をかけて変色したことで獲得した色調となりますので、その作為ではない美の着地点もまた前向きに捉えて頂けるオンリーワンではないでしょうか。