爽やかなパールグレーカラー、優しいテクスチャー、そして何より柔らかな着心地。カシミア 100％ のテーラードジャケットというともすれば緊張感を与えがちな要素性だからこそ、無理せずに現実的に発されるこれら柔和なムードは極めて効果的。

“ 選んでくれたその人に元々ある個性や魅力を損わず、邪魔をせず、かつ気付かれないほどにさりげなく支えてより魅力的になるようそっと押し上げる ” という弊店の大好きな概念を軸に、1988 年以降一貫して続けられるヴェロニク・ニシャニアン女史によるエルメス・オムというクリエイションにおいても時代や国を問わず切っても切り離せないカシミア・テーラードジャケットですが、女史は極めて挑戦的な側面も持ち合わせておりますので、不変を大前提としながらも時代に則したムードを独自のバランスで配合しておりまして、こと本品におきましては、ややばかり装飾的なショルダーラインにクラシックな気配の強い機能装飾と、男性的な強さを前に押し出した印象でもありつつ、カシミアの優しいドレープも有するために良い意味で捉えどころのない人物像となります。

うーん、結局のところ優しさや知的なモード感が勝つのでしょうか。それこそ前述の通り選んだその人の元々にある個性が大きな要因になるのでしょうが、いずれにせよテーラードジャケットという区分においても、そのカシミア素材という要素性においても“ 構えずに是非 ”と思わずにはいられない逸品です。ワードローブに在ることで今後の人生をより豊かにしてくれるのはほぼほぼ間違いないかと存じますので、この機会にどうぞ御検討くださいませ。