90 年代、イタリアの南で製作されたテーラードジャケットはピークドラペルにダブルブレストと良い意味で男らしい見慣れた条件を備えているにも関わらず、なぜだかとても新鮮な印象。

男性的なショルダーバランスと短い着丈の調和によって正々堂々としたボックスシルエットとなったパターンメイクは、70 年代から 80 年代頃にビッグメゾンで主流であった女性に向けてのモードアプローチを強く連想させるバランスで、これまた男性の世界では未だに新鮮なグリーンとイエローカラーによる美的なテキスタイルデザインも相まって女性に向けての一着と見紛う仕上がりなのですが、そこはやはり正統派南イタリアのサルトリアピースとあって、流石の男性性。
しかしながらこの構築は、新旧問わずサルトリアピースの中でも特に柔軟なファッション感と職人技術あってものではないかと存じます。

それもそのはず、本品は既成ではなくオーダーメイドで製作された一着。個の強さも納得ですが、それにしても一体全体どんな洒落者傾奇者が依頼したのだろう、と想像が膨らみます。ちなみに当然の如くほとんどが手縫いとなっておりますので御覚悟を。

フィッティングは44サイズ程となります。お身体に合われる方が羨ましい気持ちでいっぱいです。